町田 雅秀(鍼灸師)

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村山が鍼灸学校に通っていた際の恩師です。私が学生だったのは20年前になりますが、その頃もずっと、仕事とは別に12年間にわたって埼玉医科大学の解剖学教室で学び続けていらっしゃいました。非常に努力して勉強された方であり、尊敬しております。
町田 雅秀(まちだ まさひで)

昭和55年 鍼灸師免許取得 鍼灸師
昭和56年 東洋医学研修センター研修
昭和57年 旧早稲田鍼灸専門学校勤務
     早稲田医療専門学校副校長
     人間総合科学大学鍼灸専門学校講師、同校臨床実習施設で臨床指導
平成10年 神経障害の研究で医学博士号取得 医学博士
平成16年 早稲田医療技術専門学校講師
平成18年 WHO認定国際鍼灸師取得
平成19年 人間総合科学大学人間科学部講師
平成23年 同大学保険医療学部講師
平成24年 メディコ新宿開院

村山:今の職業とお仕事を教えてください。
町田:主に鍼灸、マッサージを含めた治療院をやっています。その他に大学で解剖学を教える教員をしたり、医療機具メーカーさん主催のセミナーや日本鍼灸師会の様々な支部での講演といった活動が多いです。
村:今の主業である治療家としてのお仕事に興味を持ったきっかけはなんですか?
町:まあ、きっかけというか、ずいぶん遡って約40年くらい前になるんですが、大学を卒業したんですけども、ご時世柄、就職先がほとんどなかったんですね。特殊なことを勉強していたものですから。
村:獣医師さんですよね?
町:そうです。ですから、一般のサラリーマンになるわけでもないし、かといって自分で動物病院とかそういうものを開業するということも全然考えていないですし。今はそういうことは無いんでしょうけど、40年前というのは、動物病院というものははやっていなかったんです。犬や猫を診るなんてあまりなくてね。普通は、牛や馬といった大動物・商業動物を診ることが主だったんですよ。だから同級生が100人くらいいましたけど、卒業時点で就職が決まっていたのは半分以下だったでしょうか。 それで大学に研究生として1年残ってみたものの、状況は変わらなかったんですね。そうしたら、その時お世話になっていた先生が、「鍼灸というものがあるんだが、やってみないか」と。 このままいても就職先はないし、そういう技術を身に付けたら何か変わるかなと思って、動物の方で何かできるかなと思って。動物への鍼灸治療は獣医師の資格が必要ですから。それで勉強してみることにしたんです。そうしたら、そのお世話になっていた先生が、たまたま当時の早稲田の鍼灸学校の校長、山田真一先生を紹介してくださったんです。
村:教育者と治療家という職業をお持ちですが、まずは教育者として心掛けていることや、仕事の魅力についてお聞かせください。
町:物を教えると言いますか、教育する立場から言うと、第一には出来ない人でも何でも諦めないということですね。教える方が諦めてしまったらもうダメです。これは絶対に言えると思います。あと、学生さんは試験の直前まで伸びますから、それを信じてやることですね。
村:教わる側の可能性を、教える側も信じてあげるということですね。
町:そうです。信じてあげないことには信頼関係は築けませんからね。逆に信頼関係が出来ると楽なんです。言ったことも分かってくれるし、最初はつっぱねていた学生さんが、だんだんとこっちの方を向くようになってきたりして。そういう大きな変化をみつけられると一番楽しいですね。あとは卒業後も問い合わせがあったらきちんと対応することも大切です。
村:それで町田先生は多くの卒業生から慕われていらっしゃるわけですね。私も含めてですが。R・F ACADEMYでも、卒業後にも新しいことを学ぶ機会をつくるため、卒業生向けセミナーを開きたいと思っています。
町:いいですね。
村:今は教員としての魅力をお話しいただきましたが、次に治療家としてのお仕事の魅力や心掛けていることをお聞かせください。
町:仕事の魅力はやはり、自分が一生懸命治療した分、患者さんから反応が返ってくることですね。一生懸命にやってあげると、本当にかえってきます。
常に心がけていることは、患者さんが、来たときと比べて必ず変化がある状態でお帰しするということ。時に悪化することもありますが、それも変化なんですね。変化があるということは良いことなんです。何も変わらないということは全然ダメですね。
村:治療に対して反応があったということが大事なんですね。
町:そういうことですね。生体反応があったということなので、いいことなんですね。
村:ルッチュのインタビューですので、足と靴について伺います。患者さんの治療の中で、足というものについてはどのように位置づけられ、どのように捉えていらっしゃいますか。
町:足はとっても重要な部分ですね。足というのは身体を支えていますから、例えば腰痛がある人の場合は、特にチェックを要する場所ですね。膝の悪い人もそうです。歩き方や靴の減り方なんかもチェックします。
結局、足の裏の感覚が頭まで来ているんですからね。足の裏でいろんなものを感じたいわゆる固有感覚受容器からの情報は必ず頭まで送っているんですから。
足を触って、足の骨に動きをつけてあげるためにモビリゼーションしてあげると、みなさん立った時に、「しっくりくる」と言います。
村:この学校は、靴の学校としてはかなり医療的と言いますか、身体のことに踏み込んだ学校になるのですが、やはり一番の中心となるテーマは靴です。靴作りを学ぼうかなと思う人に向けて、又は今後、靴に携わろうとしている人に対して、何か心掛けて欲しいことはありますか。
町:靴の仕事では、どうしても足の部分だけにしか目を向けませんよね。ただ、一口に足といっても、足というのは身体全体の体重を支える部分なので、荷重がかかっている足と非荷重の足とでも全く違います。歩き方も、人によっていろんな歩き方があるわけですから、足だけ見ていいものを作ろうというのは無理だと思います。では、どこを見るべきかといったら、やっぱり下肢帯ですね。本当は背中や頭から足先まで全部見るべきなんでしょうけれど。それらの構造、働き、つまり機能を知ったうえで足を見ることができるようになれば、きっと身体のためにいい靴が作れるんじゃないかなと思います。
村:全身の中の足として捉える感性を身に付けてほしいということですね。
町:はい。そういう広い視野で靴に携わってほしいですね。
村:靴やインソールが、健康や治療、競技生活においてプラスの効果をもたらすとお考えになりますか。
町:はい、そう思います。足と靴が全然合っていないなという人もいますし、サイズがぶかぶかな人、紐もろくすっぽ締めてない人もいます。これじゃあ靴の意味が無い。
やっぱり自分に合った靴をオーダーして作るのは良いんでしょうが、靴だけでどうにかなると思っている方が多いですけど、実際にはそうじゃないケースもけっこう多いです。既成靴とインソールの方が足や身体に良いことも多くあります。ですから、インソールというものが重要であることはよく患者さんにも言っています。
村:先ほど、足の特徴と腰の痛みが関係しているというお話がありましたが、靴を変えるだけでは対応しきれないケースが多いということですか。
町:そうですね、しっかりと矯正した方がいいということですね。
村:患者さんで、最初の来院時からインソールを入れているような方はどのくらいいらっしゃいますか。
町:ほとんどいないですね。買った時の中敷きがそのまま入っていることが圧倒的に多い。趣味でランニングをやる方も多いですが、靴にはある程度気を使っても、インソールまで気を使っている人は、本当に少数です。自分に合ったインソールを入れた方が絶対に良いと思うんですけれどね。  身体の重心線というのは絶えず動いているものですが、やっぱりパフォーマンスの良い人というのは重心がブレないですよね。もし重心がブレて歩いていたら、良い靴でも体には負担がかかってしまっているわけです。その重心のブレをどういう風にしたら補正できるのかというのが、靴の中のインソールの役目だと思うんですね。  だから靴+インソールが上手く作れたら最高になると思います。
村:そういう人物を増やすためにも、町田先生には、1年目は腰から下の運動機能について、2年目は腰上の機能についても教えて戴きたいと思っています。
町:体幹ですね。
村:理想は頭まで行きたいですが、無理に急ぐこともないので、まずは体幹をきっちり学んでもらって、残りは卒業後に学ぶ機会を作るのも良いと思っています。そこまでの知識を深く身に付けた人が増えると、靴業界も面白くなるんじゃないかと思います。
町:そうですね、格好の良い靴はいくらでもありますが、それだけでなく、デザイン性も機能性も備えた靴を作れることができる。そんな人が増えるといいですね。
2015年8月 メディコ新宿はりきゅう治療院にて